
睡眠時無呼吸症候群Sleep Apnea Syndrome
About睡眠時無呼吸症候群とは
睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome: SAS)は、睡眠中に呼吸が一時的に止まったり、浅くなったりする病気です。これにより、十分な酸素が体内に取り込まれず、様々な症状やリスクを引き起こす可能性があります。
Structure睡眠時無呼吸が起きる仕組み

睡眠中に、喉の筋肉が緩むことで気道が狭くなり、呼吸がしづらくなります。特に、肥満や扁桃肥大などがあると、さらに気道が狭くなりやすく、呼吸が止まってしまうことがあります。この状態を無呼吸と呼びます。
無呼吸の状態が続くと、血液中の酸素濃度が低下し、脳がそれを感知して呼吸を再開させようとします。この時、大きな呼吸をしたり、いびきをかいたりすることがあります。
睡眠時無呼吸症候群の原因は、大きく分けて閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)と中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSA)の2種類があります。ここでは、一般的なOSAについて詳しく説明します。
無呼吸の状態が続くと、血液中の酸素濃度が低下し、脳がそれを感知して呼吸を再開させようとします。この時、大きな呼吸をしたり、いびきをかいたりすることがあります。
睡眠時無呼吸症候群の原因は、大きく分けて閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)と中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSA)の2種類があります。ここでは、一般的なOSAについて詳しく説明します。
Cause OSA閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)の主な原因
解剖学的な要因
- 肥満:首周りの脂肪組織が増加することで気道が圧迫されやすくなります。
- 扁桃肥大:扁桃腺が大きいと、気道を塞いでしまうことがあります。
- アデノイド肥大:アデノイドが大きいと、鼻腔から咽頭にかけての気道を塞いでしまうことがあります。
- 小顎症:下顎が小さいと、舌が気道に落ち込みやすくなります。
- 鼻中隔弯曲症:鼻の構造的な問題で、鼻腔が狭くなり呼吸がしづらくなります。
生活習慣の要因
- 飲酒:筋肉を弛緩させる作用があり、気道を狭める可能性があります。
- 喫煙:気道粘膜の炎症を引き起こし、気道を狭める可能性があります。
- 睡眠薬や鎮静剤の使用:筋肉を弛緩させる作用があり、気道を狭める可能性があります。
その他の要因
- 加齢:喉の筋肉が衰え、気道が狭くなりやすくなります。
- 男性:女性に比べて、SASのリスクが高いとされています。
- 遺伝的要因:家族歴がある場合、SASのリスクが高くなることがあります。
Cause CSA中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSA)の原因

CSAは、脳からの呼吸指令が正常に伝わらないことが原因で起こります。OSAに比べてまれですが、心不全や脳卒中などの疾患が関連していることがあります。
上記以外にも、さまざまな要因が複合的に関与して睡眠時無呼吸症候群を引き起こすことがあります。気になる症状がある場合は、専門医に相談することをおすすめします。
上記以外にも、さまざまな要因が複合的に関与して睡眠時無呼吸症候群を引き起こすことがあります。気になる症状がある場合は、専門医に相談することをおすすめします。
定義

睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に10秒以上の呼吸停止が1時間に5回以上、または睡眠時間7時間あたり30回以上起こる状態と定義されます。
症状
睡眠時無呼吸症候群の主な症状は以下の通りです。
- 大きないびき:睡眠中に、大きないびきをかくことがあります。これは、狭くなった気道を通る空気が振動することで発生します。
- 睡眠中の呼吸停止:睡眠中に、一時的に呼吸が止まることがあります。これは、無呼吸と呼ばれ、10秒以上続くことがあります。
- 起床時の頭痛や倦怠感:睡眠中の無呼吸により、十分な酸素が脳に供給されず、頭痛や倦怠感が生じることがあります。
- 日中の強い眠気:睡眠中の無呼吸により、睡眠の質が低下し、日中に強い眠気を感じることがあります。
- 集中力や記憶力の低下:睡眠不足や酸素不足により、集中力や記憶力が低下することがあります。
- 夜間の頻尿:睡眠中に何度もトイレに行くことがあります。前立腺肥大症、過活動膀胱など他の泌尿器科の病気と間違われることがあります。
- 起床時の口渇:睡眠中の口呼吸やいびきにより、口が乾燥し、起床時に口渇を感じることがあります。
睡眠時無呼吸症候群の症状としてほかにも、いらいら感、抑うつ、性欲の減退といった精神的な症状が現れることもあります。
リスク
睡眠時無呼吸症候群は、単に睡眠不足を引き起こすだけの病気ではありません。
放置すると、様々な合併症を引き起こし、生活の質を低下させるだけでなく、生命を脅かす危険性も高まります。
主なリスクは以下の通りです。
放置すると、様々な合併症を引き起こし、生活の質を低下させるだけでなく、生命を脅かす危険性も高まります。
主なリスクは以下の通りです。
- 高血圧:睡眠中の無呼吸により、交感神経が活発になり、血圧が上昇しやすくなります。高血圧は、心疾患や脳卒中などのリスクを高めるため、注意が必要です。
- 心疾患:心臓に負担がかかり、不整脈、心不全、心筋梗塞などを引き起こすリスクが高まります。
- 脳卒中:脳への血流が不足したり、血栓ができやすくなったりすることで、脳卒中を引き起こすリスクが高まります。
- 糖尿病:睡眠不足により、インスリンの働きが悪くなり、血糖値が上昇しやすくなります。糖尿病は、合併症を引き起こしやすく、放置すると重篤な状態になる可能性があります。
- 代謝異常:睡眠不足は、代謝機能を低下させ、肥満や脂質異常症などを引き起こしやすくなります。
- 日中の事故:睡眠不足により、日中の眠気や集中力低下が起こり、交通事故や労働災害などのリスクが高まります。
- 認知機能の低下:睡眠不足や酸素不足は、脳の機能に悪影響を及ぼし、記憶力や判断力、認知機能の低下を引き起こす可能性があります。
これらのリスクを避けるためには、睡眠時無呼吸症候群の早期発見と適切な治療が重要です。
もし上記のような症状に心当たりがある場合は、医療機関への受診をおすすめします。
もし上記のような症状に心当たりがある場合は、医療機関への受診をおすすめします。
Examination CSA睡眠時無呼吸症候群(SAS)の検査について
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の検査には、簡易検査と精密検査の2種類があります。それぞれの特徴と、検査結果に応じた対応について説明します。
1. 簡易検査

- 目的:睡眠時無呼吸症候群の可能性をスクリーニング(ふるい分け)するために行われます。
- 方法:自宅で行うことができ、小型の装置を装着して寝るだけです。主に、呼吸の状態、血中の酸素飽和度、脈拍などを測定します。
-
メリット:
・自宅で手軽に検査できる
・費用が比較的安い -
デメリット:
・詳細な睡眠状態は把握できない
・重症度の正確な判断が難しい場合がある -
結果と対応:
・重症の場合:簡易検査の結果、AHI(無呼吸低呼吸指数)が著しく高く、重症と判断された場合は、精密検査を待たずに治療を開始することがあります。
・軽症または中等症の場合:軽症または中等症と判断された場合は、精密検査(PSG検査)に進み、より詳細な睡眠状態を評価することが推奨されます。

2. 精密検査(PSG検査:ポリソムノグラフィー検査)
- 目的:睡眠時無呼吸症候群の確定診断や重症度を正確に評価するために行われます。
- 方法:脳波、眼球運動、筋電図、心電図、呼吸の状態、血中の酸素飽和度など、様々な項目を同時に測定します。
-
メリット:
・睡眠状態の詳細な情報が得られる
・睡眠時無呼吸症候群の正確な診断と重症度評価が可能
・他の睡眠障害との鑑別ができる - デメリット:費用が比較的高い
睡眠時無呼吸症候群の治療方法について
一般的には、まず簡易検査を受けて睡眠時無呼吸症候群の可能性を確認します。簡易検査の結果が重症の場合は精密検査を待たずに治療を開始することもあります。簡易検査で軽症から中等症と診断された場合や、症状が強く疑われる場合は、精密検査を受けることが推奨されます。
Treatment睡眠時無呼吸症候群の治療方法について
睡眠時無呼吸症候群の治療方法は、重症度や原因によって異なります。主な治療法は以下の通りです。
1. 生活習慣の改善

軽度の睡眠時無呼吸症候群の場合、生活習慣の改善だけでも症状が軽減することがあります。
- 減量:肥満は気道を狭める原因となるため、減量が有効です。
- 飲酒を控える:アルコールは筋肉を弛緩させ、気道を狭めるため、寝る前の飲酒は避けましょう。
- 喫煙を控える:喫煙は気道粘膜の炎症を引き起こし、気道を狭めるため、禁煙が推奨されます。
- 寝る姿勢:横向きで寝ることで、気道が確保されやすくなります。仰向け寝は避けるようにしましょう。
- 睡眠薬や鎮静剤の使用を控える:これらの薬は筋肉を弛緩させ、気道を狭める可能性があるため、使用を控えるか医師に相談しましょう。

2. マウスピース(口腔内装置)
軽度の睡眠時無呼吸症候群の場合マウスピースは、睡眠時に装着することで下顎を前方に移動させ、気道を広げる装置です。軽度の睡眠時無呼吸症候群に対して有効な場合がありますが、中等度以上の患者様には十分な治療効果が得られないことが多く、CPAP治療が推奨されます。歯科医師によって作成されます。
- メリット:小型で持ち運びが容易
-
デメリット:
・中等度以上の睡眠時無呼吸症候群には効果が乏しい
・違和感がある場合がある
・歯並びに影響を与える可能性がある
3. CPAP(持続陽圧呼吸療法)

CPAPは、睡眠時に鼻に装着したマスクから空気を送り込み、気道を陽圧に保つことで無呼吸を防ぐ治療法です。中等度から重度の睡眠時無呼吸症候群の方の場合、CPAP治療により無呼吸低呼吸指数(AHI)が大幅に改善し、多くの場合、5回/時未満に抑えることが期待できます。こうして日中の眠気や倦怠感、高血圧などの合併症リスクを大幅に軽減することができます。
CPAP治療の効果について
CPAP治療は、睡眠時無呼吸症候群の治療において最も効果的な方法の一つです。適切なCPAP治療を行うことで、以下のような効果が期待できます。
治療の継続について
睡眠時無呼吸症候群の治療は、症状が改善しても継続することが重要です。定期的な検査や医師の診察を受け、適切な治療を続けるようにしましょう。
Cost費用について
-
1. 検査費用
- 簡易検査:検査料は保険適用で、3割負担では2千円程度です。
- 精密検査(PSG検査):同じく保険適用で3割負担では1万円程度です。
-
2. 治療費用
-
マウスピース(口腔内装置):保険適用となる場合と、ならない場合があります。
・保険適用となる場合は、数万円程度が目安です。
・保険適用外の場合は、歯科医院によって費用が異なります。 -
CPAP(持続陽圧呼吸療法):保険適用となり、自己負担額が3割の方は月々5,000円程度の自己負担額で治療を受けることができます。
・毎月医療機関を受診し、CPAP装置の貸し出しと管理を受ける必要があります。
-
マウスピース(口腔内装置):保険適用となる場合と、ならない場合があります。
医療費控除について
睡眠時無呼吸症候群の治療にかかる費用は、医療費控除の対象となる場合があります。医療費控除を受けるためには、確定申告の際に医療費の領収書などを提出する必要があります。
FAQ睡眠時無呼吸症候群についてのよくある質問とその回答
症状について
- いびきがうるさいと言われるのですが、睡眠時無呼吸症候群でしょうか?
- いびきは睡眠時無呼吸症候群の代表的な症状の一つですが、いびきをかく人全てが睡眠時無呼吸症候群であるわけではありません。しかし、大きないびき、途切れるいびき、呼吸が止まっているようないびきがある場合は、睡眠時無呼吸症候群の可能性が高いです。一度検査を受けることをおすすめします。
- 日中の眠気がひどいのですが、睡眠時無呼吸症候群でしょうか?
- 日中の眠気は、睡眠時無呼吸症候群の典型的な症状の一つです。しかし、他の睡眠障害や生活習慣、ストレスなどによっても眠気が生じることがあります。睡眠時無呼吸症候群の可能性を調べるためには、検査が必要です。
リスクについて
- 睡眠時無呼吸症候群を放置するとどうなりますか?
- 睡眠時無呼吸症候群を放置すると、高血圧、心疾患(心筋梗塞、脳卒中など)、糖尿病、生活習慣病などの合併症リスクが高まります。また、日中の眠気による事故のリスク増加や、認知機能の低下なども起こりえます。早期の治療が大切です。
- 子供も睡眠時無呼吸症候群になるのでしょうか?
- はい、子供も睡眠時無呼吸症候群になることがあります。特に、扁桃肥大やアデノイド肥大がある子供はリスクが高いです。子供の睡眠時無呼吸症候群は、成長や発達に影響を与える可能性があるため、注意が必要です。
検査について
- 簡易検査はどこで受けられますか?
- 簡易検査は、睡眠時無呼吸症候群の検査を行っている医療機関で受けることができます。耳鼻咽喉科、呼吸器内科、睡眠専門外来などで相談してみてください。
- 簡易検査で異常がなくても、睡眠時無呼吸症候群の可能性はありますか?
- はい、簡易検査はスクリーニング検査であり、重症度を正確に判断することは難しい場合があります。簡易検査で異常がなくても、症状が強い場合は精密検査を受けることをおすすめします。
治療について
- CPAP治療は一生続ける必要がありますか?
- 睡眠時無呼吸症候群の原因や重症度によって、CPAP治療を続ける期間は異なります。生活習慣の改善や減量などで症状が改善すれば、CPAP治療を中止できる場合もありますが、医師の判断が必要です。
- CPAP治療は痛いですか?苦しいですか?
- CPAP治療は、鼻にマスクを装着して空気を送り込む治療法ですが、痛みや苦しさを感じることはほとんどありません。最初は違和感があるかもしれませんが、慣れると快適に使えるようになります。
費用について
- CPAP治療は医療費控除の対象になりますか?
- はい、CPAP治療は医療費控除の対象となります。確定申告の際に、医療費の領収書などを提出してください。
- CPAP装置のレンタル費用はどのくらいですか?
- CPAP装置のレンタル費用は、保険適用となり、月々5,000円程度の自己負担額で治療を受けることができます。ただし、CPAP装置の種類や機種によって費用が異なる場合があります。
その他
- 睡眠時無呼吸症候群は遺伝しますか?
- 睡眠時無呼吸症候群には、遺伝的な要因も関与していると考えられています。家族歴がある場合は、リスクが高くなる可能性があります。
- 睡眠時無呼吸症候群は治りますか?
- 睡眠時無呼吸症候群は、適切な治療を行うことで症状を改善し、合併症のリスクを減らすことができます。生活習慣の改善やCPAP治療などで、多くの方が症状の改善を実感されています。
上記以外にも、気になることや不安なことがあれば、遠慮なくご相談ください。